都会と地方の間で広がる有効求人倍率の格差

日本の景気は回復傾向にあると言われており、その根拠とされているのが有効求人倍率だ。有効求人倍率とは、一人の求職者に対して求人数がどれくらいあるかを読み取れる指標のことを言う。国の経済状況を把握できるように、厚生労働省が算出しているデータである。この指標は、景気が良かったバブル期で1.46を記録している。リーマンショックという世界的な規模での金融危機に陥った後には、0.4という恐ろしく低い数値を叩き出している。この有効求人倍率が高水準を示し始めたのは、2018年頃からだ。最高値が1.63、最低値でも1.57になったのは2019年のこと。いわゆる、求職者優位な状況が続くようになったである。日本国内の景気が回復しているとされるのは、このデータが根拠になっている。

しかし、この有効求人倍率を細かく見た人であれば、日本全体として本当に景気が回復しているのかどうか疑問に感じるのではないだろうか。というのも、先に挙げた数値は全国の平均値であり、その平均値を押し上げているのは東京や大阪、愛知といった一部の都道府県だからである。例えば、2019年の北海道は年間の平均がおよそ1.23という低水準の有効求人倍率になっており、2.00を超える数値で安定している東京とは0.8ポイント以上の差が付いている時期もある。このように、地方の低倍率は北海道だけに見られるものではなく、青森や長崎など多くの地域で見受けられる。有効求人倍率の上昇から国内の景気が上がり調子だと判断する人も多いが、それは国内ではなく、一部の大都市の景気が良くなっているに過ぎないという点も把握しておく必要があるだろう。